アパート経営では、入居者の安全確保と物件の資産価値維持のために定期的な点検が欠かせません。
点検を適切に実施していない場合、入居者の住環境が悪化して空室率が上昇したり、建物の経年劣化が進んで資産価値が低下したりするリスクがあります。
しかし、点検の種類は多岐にわたり、それぞれ実施時期や費用が異なります。中には法律で義務付けられているものもあり、守らないと罰則を受けることもあるため、アパート経営に必要な点検の種類と、その費用相場について確認しておきましょう。
Contents
アパートオーナーが知っておくべき点検義務の基礎知識
アパートの点検には「法定点検」と「任意点検」の2種類があります。
法定点検は、建築基準法や消防法で定められた安全基準を満たしているかを確認するための点検です。実施と報告が必須とされており、怠った場合は罰則を受けるおそれがあります。
一方、任意点検は設備の予防保全や快適性の向上のために自主的に行うもので、実施義務はありません。
2種類の点検を適切に行い、定期的な改善を進めることで2つのメリットが生まれます。1つ目は、安全で快適な住環境が保たれることによる入居者満足度の向上です。2つ目は、計画的な点検と修繕による建物の経年劣化を抑えられることです。
また、定期的な点検をしておくことで、設備の不具合を早期に発見できるため、大規模修繕のコストを抑制することが可能です。このように、法定・任意の両面からの点検実施は、持続可能な不動産経営の基盤となるのです。
法定点検
アパート経営における法定点検の名称と内容は次のとおりです。
点検の名称 | 概要 | 頻度 |
---|---|---|
自家用電気工作物定期点検 | 電気事業法で定められた点検。ビル、工場、病院、学校、建設現場等の電気設備を電気主任技術者が各設備の状態をチェックする。 | ・月次点検:1ヶ月に1度 ・年次点検:1年に1度 |
簡易専用水道管理状況検査 | 水道法で定められた点検。地方公共団体の機関や厚生労働大臣の登録を受けた簡易専用水道検査機関に点検を依頼し、受水槽の検査や外観検査、水質検査、書類検査を行う。簡易専用水道を使用かつ容量が10㎡以上の受水槽があるアパートが対象。 | 1年以内に1度 |
専用水道定期水質検査 | 水道法で定められた点検。おおまかな検査項目は簡易専用水道管理状況検査と同じ。容量100㎡以上の受水槽があり、入居可能人数101人以上、導管口径25㎜以上かつ全長1500㎜以上のアパートが対象。 | ・残留塩素検査:毎日 ・水質検査:1ヶ月に1度 ・受水槽清掃:1年に1度 |
消防用設備点検 | 消防法によって定められた点検。「消火器具」「誘導灯」「漏電火災警報器」「火災報知設備」「避難器具」が点検対象。 | ・機器点検:半年に1度 ・総合点検:1年に1度 |
エレベーター定期検査 | 建築基準法によって定められた点検。一級建築士・二級建築士または昇降機等検査員が点検を行う。 | 1年に1度 |
建築設備定期検査 | 建築基準法によって定められた点検。共同住宅部分が1,000㎡を超えるアパートが対象となり、調査対象は自治体によって異なる。 | 3年に1度 |
法定点検には、点検をしたことを報告する義務があります。点検を実施しても、期日までに報告をしなければ罰則を受けることがあるため注意しましょう。
任意点検
任意点検は法定点検とは違い、オーナーもしくは管理会社が自主的に実施する点検です。
点検の名称 | 概要 |
---|---|
ドア点検 | 自動ドアの開閉や詰まりをチェックする。 |
集合ポスト点検 | 集合ポストの破損やチラシが溢れていないかチェックする。 |
共有部分点検 | 廊下やエントランスの清掃及びキズ、雨漏りのチェック。 |
機械式駐車場点検 | 機械式駐車場の動作確認。 |
駐輪場点検 | 駐輪場の清掃や屋根の破損チェック。 |
任意点検は、法律による義務付けはないため実施しなくても違法にはなりません。しかし、定期的な点検を怠ると、修繕や改善が必要な箇所を見逃すことがあります。
そのまま長期間放置されると、入居者の生活に支障をきたすだけでなく、入居者の満足度低下による退去の増加や、新規入居者の減少などにつながるリスクがあります。
結果として空室率の上昇につながり、経営に大きな影響を及ぼすことになりかねません。そのため、快適で住みやすいアパートを実現し、安定した経営を続けるためにも、任意点検の定期的な実施が必要です。
アパートの点検にかかる費用の相場
法定点検と任意点検は費用が発生するため、諸経費として収益計画に組み込んでおくことが大切です。
費用の相場は次のようになりますので、参考にしてください。
点検の種類 | 点検の名称 | 相場(円) |
---|---|---|
法定点検 | 自家用電気工作物定期点検 | 20,000 |
簡易専用水道管理状況検査 | 15,000~20,000 | |
専用水道定期水質検査 | 2,500~5,000 | |
消防用設備点検 | ・20戸未満:10,000〜15,000 ・20以上50戸未満:25,000〜50,000 ・50戸以上:100,000〜150,000 |
|
エレベーター定期検査 | ・フルメンテナンス:月額35,000 ・パーツ・オイル・グリス契約:月額20,000(ただし、部品代などは別途必要) |
|
建築設備定期検査 | 50,000~70,000 | |
任意点検 | ドア点検 | 10,000 |
集合ポスト点検 | 10,000 | |
共有部分点検 | 10,000 | |
機械式駐車場点検 | 10,000 | |
駐輪場点検 | 10,000 |
なお、任意点検は管理会社に依頼した場合の相場です。オーナー自ら実施する場合は、費用の削減が可能です。
点検にかかる費用は業者によって異なる
点検費用は一律ではなく依頼する業者によって変動することから、複数の業者に見積を依頼し比較することが大切です。
また、比較のポイントは、価格だけでなく担当者の説明が丁寧であったりレスポンスが速いなど、安心して任せられることをチェックしておく必要があります。
会社の評判などはGoogleの口コミで確認できることもありますので、事前に調べておきましょう。
アパートの点検義務を守らないことで発生する4つのリスク
アパートの点検を怠ると、以下のようなリスクがあります。
- 法的な罰則を受ける
- 入居率の低下につながる
- 事故や故障のリスクが高まる
- 火災保険が適用されないリスクがある
この章では点検義務を実施しないことのリスクについて詳しく解説しますので、確認しておきましょう。
法的な罰則を受ける
法定点検は法律によって定められた有資格者が決められた作業を実施する必要があり、頻度も決まっています。
コストカットを理由に作業項目から削減してしまうと、次のような罰則を受ける場合があるため注意が必要です。
点検の名称 | 罰則内容 |
---|---|
自家用電気工作物定期点検 | 適切な保安点検をせずに事故が発生してしまうと、300万円以下の罰金が科せられる可能性がある。 |
簡易専用水道管理状況検査 | 保健所などの管轄署から指導を受けるだけでなく、100万円以下の罰金が科せられる可能性がある。 |
専用水道定期水質検査 | 虚偽申告や作業を怠ると100万円以下の罰金が科せられる可能性がある。 |
消防用設備点検 | 30万円以下の罰金又は拘留が科せられる可能性がある。 |
エレベーター定期検査 | 虚偽申告や作業を怠ると100万円以下の罰金が科せられる可能性がある。 |
建築設備定期検査 | 虚偽申告や作業を怠ると100万円以下の罰金が科せられる可能性がある。 |
入居率の低下につながる
法定点検は法令上の義務がありますが、アパートの景観を整えるという意味で任意点検も重要な役割を担っています。
たとえば駐車場が雑草だらけ、集合ポスト付近にチラシが散乱している、ゴミ捨て場が汚いといった状況だと、管理されていない印象を与えてしまいます。
また設備の劣化や共用部分の破損は入居者の安全を脅かす可能性があり、安心して住めないことを理由に退去者が増加する原因になってしまいます。
さらに新しく募集をしても入居者が見つかりにくくなることから、点検を実施しなければ入居率が低下しやすくなり、大きなリスクといえます。
事故や故障のリスクが高まる
エレベーターや電気系統が破損してしまうと日常生活に支障が出てしまうだけでなく、災害時に逃げ遅れるリスクが高くなります。
こうしたトラブルは住民を不安にさせるだけでなく被害が発生してしまうと損害賠償を請求されるケースもあり、オーナーにとって大きなリスクです。
法定点検は入居者の安全を確保するために必要であるため実施が義務付けられていることから、このようなリスクを抱えないためにも必ず実施することがポイントです。
火災保険が適用されないリスクがある
消防用設備点検は、法定点検として法律で義務づけられているにも関わらず、実施されていない物件が少なくありません。
都道府県消防設備協会の調査によると、2023年における消防用設備等点検報告率は以下のようになっています。
全体報告率 | 1,000㎡未満報告率 | 1,000㎡以上報告率 |
---|---|---|
55.2% | 49.1% | 75.7% |
参考:消防用設備等点検報告率について(全国の点検報告率の推移)│都道府県消防設備協会
消防用設備点検が適切に実施されていない場合、万が一火災が発生しても火災報知器や非常ベルが正常に作動せず、消防への通報が遅れるリスクがあります。
また、アパートに損害が発生しても、法定点検を実施していないことを理由に保険金が支払われないケースもあるのです。
修繕費用を火災保険でカバーできなければ、大きな損失につながるおそれがあるため、定められた点検は必ず実施しましょう。
点検の実施が難しいときの対策
アパート経営をする上で点検は必ず実施すべきですが、業者の選定や費用の工面などに時間をかけることができないオーナーも多いです。
そこでこの章ではアパートの点検が難しいオーナー向けの対策を紹介します。
管理会社に依頼をする
管理会社に点検を依頼することで業者の選定や最適な費用での作業を実現でき、効率よくアパート経営をしたいオーナーにおすすめです。
管理会社は点検業者と提携していることも多く、オーナーが直接依頼するよりも安い費用になることもあります。
このように管理会社にアパート管理を任せている場合は、管理会社を通じて見積を取得するのがポイントです。
アパートの売却も検討する
アパートの点検には手間や費用がかかるため、作業の規模によっては収益を悪化させることがあります。さらに、点検の結果、設備の老朽化や不具合が発覚した場合、修繕工事が必要となり、予想以上の費用負担が発生することがあります。
点検や修繕にかかる費用が増えると、アパート経営自体が難しくなります。そのため、大規模な修繕が必要となるタイミングや、今後の改修費用の増加が予想される段階で、アパートの売却を検討することも重要な選択肢の一つです。
アパートの売却は居住用の物件を探している買い手ではなく投資家をターゲットにして販売するため、通常の不動産売却よりも難易度は高いとされています。
そのためアパートの売却はアパートの売買実績が豊富な不動産会社に依頼し、スピーディーかつ適正価格で売却してくれる会社に依頼することが重要です。

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2023年2023年5月期_ブランドのイメージ調査(調査1~3)
調査機関:日本マーケティングリサーチ機構
調査期間:2023年3月14日~2023年5月31日
n数:129(※調査1)、124(※調査2)、136(※調査3)/調査方法:Webアンケート
調査対象者:https://jmro.co.jp/r01446/
備考:本調査は個人のブランドに対するイメージを元にアンケートを実施し集計しております。/本ブランドの利用有無は聴取しておりません。/効果効能等や優位性を保証するものではございません。/競合2位との差は5%以上。